
皆さんは川魚を日常的に食べていますか?
鰻(ウナギ)や鮎(アユ)、鮭(サケ)を食べる人は少なくありませんが、川魚よりも海水魚や肉類を食べる人の方が多いのではないでしょうか?
食の種類が豊富になった現代の日本では、川魚を日常食として食べる人は昔に比べて減少しました。
昔の人々に想いを馳せると、山間部で暮らしていた昔人は、鰻や鮎はもちろん、鯉(コイ)や鮒(フナ)、岩魚(イワナ)など様々な川魚を食用として日常的に重宝していました。
今回は、昔の人々の食生活と川魚について、調理方法や漁法を紹介しながらお話しします。

川魚は貴重なタンパク源
食材の流通経路が確立されていなかった昔、海から遠い地域に住む庶民は海の魚を口にすることは滅多にありませんでした。そこで、タンパク源として重要な役割を果たしたのが川魚だったのです(※1)。

鮎や鯉、鰻に鰙(ワカサギ)、泥鰌(ドジョウ)、鮒、岩魚、虹鱒(ニジマス)・山女魚(ヤマメ)など、地域によって違いはありますが、様々な川魚がタンパク質を補給できる食材として重宝されていました。
参考
※1「和食を支える日本の食材 おいしさの秘密と多様性」『和食ガイドブック』平成23年、農林水産省http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-86.pdf
タンパク質の補給はなぜ大事なの?
川魚が“貴重なタンパク源”として重宝されてきたとお伝えしましたが、そもそもなぜ意識してタンパク質を摂取しなければならなかったのでしょうか。
それは、人間にとってタンパク質は“命の源”だから、なのです。

人間は、水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質で出来ています。骨や筋肉、皮膚、各種臓器もすべてタンパク質が主成分です。
またタンパク質には、体をつくる要素だけでなく、体の機能を調節する役割もあります。タンパク質が不足すると免疫機能が低下し抵抗力が弱くなることから病気にかかりやすくなることもあります(※2)。
つまりタンパク質を摂ることは、健康に生きるために必要不可欠なことだと言えるでしょう。そのため、海の魚が食べられない地域の人々にとって川魚は“貴重なタンパク源”とされていたのです。
参考
※2「免疫システムの主役はタンパク質?」公益財団法人日本食肉消費総合センター
http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui4/q_071.html
昔から行われている川魚のおいしい調理方法
川魚は特有の臭いがあると言われることがあります。弊社が行ったアンケートでも、「川魚の臭いが気になる」という回答が複数ありました。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)
また川魚には寄生虫がついていることがあるため、天然の川魚を生で食べることは以前からあまりなかったようです。じっくり火を通すことが昔からのスタンダードな調理方法で、工夫をしながら調理がされてきました。
昔から行われている、川魚をおいしく食べる調理方法の一例をご紹介しましょう。
煮込む

食材を水や調味料の中で煮ることです。調味料を使って臭みを取り除きながら味付けを行う調理方法で、皆さんもご自宅で日頃からやっているものと思います。日本では、醤油や味噌など大豆由来の発酵調味料や、酒やみりんといった旨味も使用することが特徴です。
川魚の煮込み料理の一例として、濃い味噌で煮込む「鯉こく」があります。鯉こくは江戸時代に「鯉汁」とも呼ばれ、メジャーに作られていた料理だそうです。
焼く
「焼く」と一言でいってもその調理方法は様々あります。魚をそのまま串にさして焼く「姿焼き」や、塩をかけて直火でじっくり焼き上げる「塩焼き」なども有名です。

塩焼き料理の一例として、今でもよく食べられている「鮎の塩焼き」があります。
蒲焼き
醤油や砂糖などでタレをつくり、そのタレに魚をつけてから焼く調理方法です。
代表的なものに「鰻の蒲焼き」があります。江戸時代、鰻の蒲焼きは安価な軽食として庶民に親しまれていました。江戸の伝統的な郷土料理のひとつとして、今も多くの人に愛されています。

発酵
食材からうま味成分を引き出すと同時に保存性を高める効果がある調理方法です。
川魚料理の一例として、塩と米で乳酸発酵させる「鮒ずし」があります。日本古来の鮓(なれずし)の代表的なもので、滋賀県の郷土料理としても有名です。
今や観光資源としても活躍 昔ながらの川魚漁法
昔から川魚を捕獲するために様々な漁法がとられてきました。地域や川魚の種類によってその方法は多岐におよびます。
昔ながらの漁法の中には、今でも川魚を捕獲する手段として使われているものや観光客を集める観光資源になっているものも。昔ながらの漁法や釣り方をご紹介します。
梁(やな)漁
木や竹で作ったすのこ状の梁(やな)を、上流側に傾けて川の中に置き、上流から泳いできた川魚を捕獲する方法です。産卵期の鮎などは川を下る習性があるため、それを利用したものになります。一部の地域では一般の人も梁漁を体験できるようになり、観光客を集める資源として活用しているところもあります。
鵜飼(うかい)
鵜(ウ)という潜水して魚を捕らえる鳥を飼いならして行う漁法です。鵜のくちばしは大きく開くため、最大で35センチ位の川魚を捕らえることができます。魚を捕らえた際に鵜の胃の中に入らないよう、首に麻縄をつけ、吐き出させることで魚を確保します。漁業というよりも観光業として行われる場合が多く、岐阜県の長良川や京都府の宇治川など各地でたくさんの観光客を集めています。
投網(とあみ)漁
船や陸の上から袋状の網を川に投げ入れて魚を獲る漁法です。
投網漁は全国各地で幅広く行われていて、獲れる川魚は様々あります。ただ、投網で獲た魚の体は傷が付くことが多く、リリースしても生存率が下がると言われています。そのため、現代ではほとんどの河川で投網を使うことに対して規制があります。
友釣り
主に鮎を捕まえるための釣り方ですが、友釣りという方法もあります。鮎はなわばり意識が強い川魚で、自分のなわばりに他の鮎が侵入してくると体当たりのような行動をして攻撃します。その習性を利用して、エサではなく“おとり鮎”を針につけて、体当たりしてくる他の鮎を釣るという方法です。今でも行われており、「鮎の友釣り大会」が開催される地域もあります。
川魚をより身近に
このように貴重なタンパク源である川魚を確保するため、昔から色々な工夫がされてきました。
全国的にも今は養殖場が広がっておりますありますので、命の源であるタンパク質がギュッとつまった川魚を、ぜひ食べてみてください。
当場のイワナ製品はこちらから↓
鮮度・食べごたえ抜群!香ばしさと濃厚な旨味あふれる「深瀬イワナ」 【イワナ刺身】とろける食感!深瀬イワナの刺身盛り関連する記事

川魚でいつもと違う食卓を日本の食文化を再考する
ショッピングセンターのレストランフロアに足を運べば、中華・イタリアン・洋食などの専門店が、日本食だけでも蕎麦に天ぷら、とんかつ、寿司などバラエティに富んだラインナップが目に入ります。デパートのお惣 […]

イワナなど川魚を子ども時代に食べておくと良い理由
川魚は日本各地に古くから存在し、私たちの食生活に寄り添ってきました。 食の多様化により魚離れが進む現代ですが、イワナは子ども時代にぜひ食べておきたい食材です。 今回は、子ども時代にこ […]

皮も骨も全部食べらえる?岩魚のおいしい調理方法や含まれる栄養を解説
川魚の身がプリリと美味しいことはよく知られていますが、皮や骨も食べられることはご存じでしょうか?川魚の中でも岩魚(イワナ)は特に、頭から尾びれまで食べることができます。 必要な栄養を […]

懐かしい渓流魚 心を豊かにする食事
元気で健康な体を保つ秘訣といえば、ご存知の通り「十分な栄養、睡眠と適度な運動」です。とりわけ十分な栄養は、バランスの取れた食事が重要であることはいうまでもありません。 しかし日々忙しくしている […]

イワナの魅力と不思議な生態について
渓流釣りの代表格であり、食用としても人気が高いイワナ。 渓流魚の魅力は、身の美味しさだけでなく不思議な生態もそのひとつになっています。 イワナは白山以外でも日本全国各地で、さらには […]

和食はユネスコの無形文化遺産に!京料理に多大な影響を与えた川魚
2013年、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。新鮮な食材を使った独自の調理方法や栄養バランスの良さ、見た目の美しさ、季節や行事と密接に関係する食文化が文化遺産として相応しいと評価さ […]

川魚の印象に関するアンケートを実施しました
川魚の印象に関するアンケート調査を実施しました!結果を公表します。 18歳から65歳まで、日本全国に居住している方100名にランダムにご回答いただきました。 ☑ご回答 […]

渓流魚で食育推進 和食文化を知る
2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、世界的にもひとつの「食文化」として浸透しつつある「和食」。料理そのものだけでなく、日本人の在り方も評価を受けています。 日本人は自 […]

イワナはお孫さんと一緒に食べるのもオススメです
会うたびに成長し、驚きと可愛さを見せてくれる孫という存在。近くに住んでいる方も、なかなか会えない距離にいる方もいるでしょう。 どのような頻度で会っていたとしても、「孫に会いたい」と思う気持ちは祖 […]

イワナの塩焼きの作り方とコツを養魚場が解説 – 家で川魚の塩焼きを楽しむには?
こんにちは、いわな専科の坪田です。 当店では岩魚(イワナ)を販売してまして「イワナはどう焼けば上手く焼けますか?!」というご質問をよく頂きます。 そこで今回は当場の「深瀬イワナ(冷凍・内臓 […]

深瀬イワナの原種はこんな顔!地域の岩魚原種を守るために
9/15(日)、今年も白山手取川漁協 源流部の猛者3人が、手取川最上流部の白山白川郷ホワイトロード途中の「親谷の湯」周辺で『源流イワナ』10数尾を釣って持ってきてくれました。 かなり険しい場所で […]

健康で長生きを 長寿国ニッポンを支える伝統食文化
言わずと知れた長寿大国ニッポン。2018年の厚生労働省のデータによると、日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳で、男女ともに過去最高を記録しました。 世界的にみても、世界の国々 […]

渓流料理を通じてあなたの食生活をより豊かなものに「豊かな食生活のススメ8か条」
誰しも、食生活をより豊かにして幸せな暮らしをしたいと思うものです。 これは生きているなら当然のこと。「食」は人間の基本的な欲求であり、追求できる価値でもあります。 今回 […]

岩魚(イワナ)は通販で購入できる|特徴やおすすめの食べ方をご紹介
普段ご家庭で食卓にのぼる魚といえば海魚がほとんどだと思いますが、時には川魚を無性に食べたくなることがあります。 しかしそんな時にスーパーの魚売り場をのぞいてみても、川魚が並んでいないことも多々あ […]

川魚(淡水魚)で有名なものはなに?特徴と注意点を紹介します
「川魚」は「かわざかな」や「かわうお」と呼び、淡水に住む魚のことをいいます。みなさんは「川魚」と聞いて思い浮かべる魚は何でしょうか? キャンプやイベントに行ったときに食べた、つかみ取りや […]

歴史から考える山間地域における岩魚の価値と栄養成分
岩魚のを良く知っている方も知らない方もこんにちは、淡水養魚場「白山堂」の坪田です。 歴史から考える?なんかちょっと難しそうな話だな、、と思った方も 教科書のような歴史のお話をするわけではないので […]

おいしい魚を頂くためのおすすめの解凍方法を5つ教えます
日常でも鮮魚をたくさんもらったり、特売で旬の魚を多めに購入してしまってすべてを使い切ることができないときもありますよね。 そんなとき「冷凍してしまうと、味が落ちる…」と思っていませんか? […]

イワナに含まれる栄養素とは?渓流魚の魅力はたんぱく質!【管理栄養士が監修】
こんにちは、管理栄養士の横川仁美です。 今回は、白山堂さん(養殖場白山堂さん)が扱うイワナの栄養面について、詳しく解説していきます。 下に示したのは、白山堂さんのイワナの栄養価の一覧表です。 【 […]